時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

日中韓の”模擬家族論”は反日感情の元凶

 不思議なことに、日本国でも、日中韓の三国を家族に見立て、中国を父、韓国を兄、そして、日本国を弟とする見解が散見されます。この見解、家族の如き睦まじさを主張しているようにも聞こえますが、この”模擬家族論”こそ、反日感情の元凶なのではないかと思うのです。

 史実に照らしてみますと、聖徳太子厩戸皇子)による明確なる宣言を以って、日本国は、中国の冊封体制から離れており、両国の基本的な関係は対等です。日中の間には、”親子関係”は存在していないのです。また、韓国との関係を見ましても、所謂”倭の五王”の称号は日本国が朝鮮半島諸国よりも上位にあったことを示しており、日本国の史書にも、三韓朝貢が記録されています。江戸時代の朝鮮通信使や1910年の韓国併合をも考えあわせても、韓国が”兄”とはならないのです。こうした史実との乖離のみならず、主権平等が国際社会の原則として成立している時代において、今日なお国家間関係を序列を伴う家族関係に譬えることは、日本国にとりまして、何一つ、良いことはありません。何故ならば、後天的に順序を変えられない家族関係において、日本国が最下位の”弟”に位置付けられていることは、両国から永遠に格下と見なされることを意味しますし、日本国が中韓より秀でたり、何らかの要求をしようものなら、激しい感情的反発を招くからです。川崎市で起きた凄惨な殺人事件も、高校生の主犯格が中学生の少年を”年上なのに顔をたてず、生意気”という感情から殺害したそうです。この事件と同様、両国が自分達こそ格上と信じ込んでいる場合には、日本国は、執拗に苛め抜かれたり、最悪の場合には、武力行使という暴力を振るわれる可能性もあるのです。日本側には、中韓に対して国際ルールの遵守を求め、物事の道理を説く必要があるにも拘わらず…。

 こうした不利益を考慮しますと、日本国も国民も、模擬家族論に惑わされず、主権平等を原則とする今日の国際社会のスタンスを貫くべきです。”模擬家族論”には、内政干渉や序列化の危険性が潜んでいるのですから。
  

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