時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

八紘一宇は人類共通の普遍的な価値の一つでは

 国会での質問の中で、三原じゅん子議員が八紘一宇と言う言葉を用いたことが話題となっております。戦前に日本国の対外政策の方針を示す標語として掲げられたことから、朝日新聞などは、”侵略の正当化”を想起すると批判しているようです。

 報じられるところによりますと、三原議員は、経済のグローバル化に関連して八紘一宇を持ち出したそうですが、八紘一宇とは、表現は若干異なりますが、そもそもは『日本書紀』の神武天皇の条に「掩八紘而爲宇」と見え、日本国建国に際しての国造りの基本方針として解されています。『日本書紀』では、国家統合の文脈で使用されましたが、大正期には、国際社会の理想を述べる国際統合の理念として再登場しております。その一方で、八紘一宇が述べている理想は、日本国に限らず、実のところ、世界各地で見出すことができます。例えば、アメリカ合衆国の標語の一つは、”E pluribus unum”あり、多から一つへを意味しています。また、EUでも、標語として”In varietate concordia”を掲げており、これも、”多様性の中の統一”、あるいは、”多様性の調和”を意味しています。何れも、多様性を認めつつ、それらを調和させることで、一つに纏まることを理想としており、八紘一宇と意味するところは変わりはありません。国家レベルであれ、国際レベルであれ、個々の違いを相互に認め合いながら、纏まろうとする基本方針は、人類共通の価値の一つと考えられるのです(もっとも、中国などは、自国の価値を絶対視し、多様性を認めずに単一の価値を押し付けてきますが…)。

 戦前の日本国を全面的に否定したいばかりに、八紘一宇を徒に批判するよりも、日本国には、古代の建国時より人類普遍の価値に通じる考え方が存在したことを説明した方が、よほど国際的な誤解も解け、国際社会の理解を得ることができるのではないではないでしょうか。

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