時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

アジアインフラ投資銀行-危険な”バスに乗り遅れるな”論

 中国が主導して設立準備を進めているアジアインフラ投資銀行日本国政府は、これまで参加を否定してきましたが、欧州諸国の参加表明を受けて、国内では、不参加の方針を見直すべき、とする声も聞かれます。”バスに乗り遅れるな”と…。

 しかしながら、歴史を振り返りますと、”バスに乗り遅れるな”とばかりに即決した結果、予想外の結果が待っている事例も少なくありません。第二次世界大戦にあっても、破竹の勢いてヨーロッパを席巻したナチス・ドイツを目の前にして、ナチスがどのような性質の政党であるのかよく吟味せず、日本国は、日独伊の三国同盟を結成しています(最初は、防共協定であったのですが…)。連合国もまた、ソ連邦の体質にうすうす気が付きながら、戦略上の必要性から手を結びました。結局、最後は、連合国内での対立が表面化し、ソ連邦と鋭く対峙するに至ります。歴史には栄枯盛衰はつきものであるにも拘わらず、一時的な勢いや目先の利益に目が眩みますと、得てして判断力は鈍るものです。ナチスソ連邦と同じく、一党独裁国家が主導するインフラ銀への参加は、果たして、国際社会をより良くするのでしょうか。

 中国は、押しも押されぬ経済大国となり、今日、大国としての地位固めに躍起となっております。しかしながら、中国は、冊封体制の復活を目指している節があり、安易に靡きますと、戦後、国際社会で確立した主権平等の原則や法の支配が踏みにじられる可能性があります。アジアインフラ投資銀行への参加は、”暗黒行き”のバスに乗り込むことかもしれず、このバスがどこに向かうのか、まずはしっかりと見定めるべきと思うのです。

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