時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

慰安婦が奴隷ならば炭鉱労働者も奴隷になるのでは?

 報じられるところによりますと、安倍首相が慰安婦を”人身売買”と述べたことに対して、韓国国内では、反発が強まっているそうです。慰安婦は、”奴隷”であったとして…。

 慰安婦を奴隷とする根拠として、しばしば、前借制度が挙げられています。確かに、古代から、債務返済の代わりに自らの身を売った債務奴隷が存在しており、借金と奴隷との関係はないわけではありません。しかしながら、慰安婦の場合、借金の返済不能て奴隷身分に落ちたのではなく、前借金は実質的には前払いの契約であり、契約の前後で契約者としての法的身分に変化は生じてはいません。もちろん、奴隷のように、事業主の所有物となったわけでも、売買の対象となったわけでもないのです。少なくとも、日本側の資料によりますと、慰安婦には、”廃業”する自由もあり、借金返済期間に退職する場合には、違約金の支払いで清算したそうです。また、前借の他にも、借金の額に比例して毎月給与も支払われております(食費や家賃等も事業者負担…)。そして、仮に慰安婦制度が奴隷制度であったとしますと、最大の被害者は、最も人数の多かった日本女性となりますし、韓国もまた、朝鮮戦争ベトナム戦争にあって”奴隷制度”を設けていたことになります(あるいは、朝鮮人の事業者の中には、何らの契約をも結ばずに慰安婦する、あるいは、慰安婦を奴隷的な状況に置いた事例もあったのかもしれない…)。

 前借制度は、慰安婦に限られたものではなく、炭鉱労働者の契約においても広く用いられておりました。過酷な仕事には人が集まりませんので、高給を約束すると共に、纏まったお金を一度に支払う必要があったのでしょう。歴史の暗い一面ではありますが、前借制度を以って慰安婦を奴隷と認定することはできないのではないかと思うのです。

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