時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

AIIBは行く先不明のバス

 中国経済の減速が報告される中、AIIBの行く先にも不透明感が漂っております。創設メンバーの締め切りが3月末であったこともあり、日本国の不参加は、大失敗であったとする意見も聞かれます。

 ”バスに乗り遅れるな”論の人々は、中国が運転手となるバスの行く先を確認しているのでしょうか。多数の諸国が乗車したからといって、そのバスが安全に運転される保証はありません。最近の情報によりますと、理事会が設置されるとはいっても、中国が主張する臨時理事会では、他の参加諸国は決定プロセスから排除されたに等しく、決定権は、中国の手中にあります。表向きは公平性を装いながら、受注に際しても中国企業が優遇されることも当然に予測されます。また、乗客の顔ぶれを見ましても、欧州諸国とロシア、イスラエルとイラン、というように、対立状態にある諸国が乗り合わせています(内紛の原因にも…)。AIIBの融資通貨も人民元とされていますので、広域的な元通貨圏、延いては、中国経済圏建設の野望が一目瞭然です。

 中国が軍事大国であることは周知のことですので、一帯一路構想の実現を含めた中国の覇権達成に財政面から協力することが日本国の国益に資するとする説は、説得力に乏しいと言わざるを得ません。行く先不明のAIIBは、迂闊に乗車してはいけないバスであったのではないかと思うのです。

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