時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

福井地裁の仮処分―原子力規制委員会が無意味に

 昨日は、高浜原発の再稼働を止めた福井地裁の仮処分は、司法の越権行為ではないか、とする記事を掲載しました。本日は、司法の不当な介入が、原子力規制委員会の設置を無意味にしてしまう恐れについて指摘しておきたいと思います。

 福島第一発電所の事故対応と従来の原子力発電所に対する規制体制に対する反省から誕生したのが、原子力規制委員会です。これまで、原子力行政は経産省の管轄でしたが、取り締まる側と取り締まりを受ける側が同一の省庁に付属している点が批判され、今日の原子力規制委員会は、環境省の外局として設置されています。新たな規制機関の設置に際して、制度設計上、最も配慮された点は、組織としての高度な独立性です。高度な独立性が要求された理由は、如何なる政治的な圧力や介入を排し、純粋に専門的な科学的な見地から安全基準を作成し、運営される必要があったからです。こうして、原子力規制委員会は、国家行政組織法第3条2項に基づいて独立性を保障された三条委員会として発足したのです。

 こうした経緯に鑑みましても、イデオロギー色の強い福井地裁の仮処分の決定は、原子力規制委員会に独立性を付与した意義を台無しにしております。そして、原子力規制委員会の新基準を否定する行為は、裁判に譬えるならば、裁判所が、判決に合わせて法律のほうを変えるよう要求するに等しいのではないかと思うのです(本末転倒…)。

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