時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

憲法改正の議論-国民発案の勧め

 昨日は、第9条の改正とセットとすべきは国民の参政権拡大ではないか、とする記事を掲載したのですが、本日は、最初の一歩として、国民発案の導入を提起したいと思います。

 直接民主主義の手法としては、国民投票といった直接に国民が政治意思決定や法案の可否を判断する方法もあり、日本国憲法憲法改正手続きには、既に取り入れられております。一般の法案にも国民投票の適用範囲を拡大するという方法もあるのですが、それ以前の問題として、国民が、法案を提出できるルートが閉ざされていたのでは、国民投票も事後承認に過ぎません(もちろん、憲法改正案といった重大な草案ではやむを得ないのですが…)。一方、現実を見渡しますと、国民多数が立法を望む懸案も少なくありません。国民発案とは、特定の問題に関する法案について、一定数の国民を賛同者として集めた場合、立法府に法案を提出できるとする制度です。

 法案を提出できる権利が国民に制度的に保障されていれば、国民は、自らの国や社会をより良くするためには、何が必要なのかを具体的に考える機会を得ることができます。国民発案には、国民自身が法案を作成する形態もあれば、国の機関が作成する形態もありますが、国民にとって草案の作成の荷が重ければ、国会-臨時国民発案委員会の設置-、あるいは、内閣府法務省などに専門の機関を設けて起草作業を委任する方法もあります。また、国民の大多数が悪法と認識している法律がある場合にも、廃止法案や改正法案を提出できれば、不要な法を葬り去ることができます。もっとも、問題があるとすれば、一部のプロの市民活動家や特定の団体による世論の煽動と署名運動ですが、主唱者の所属団体等の情報を開示したり、反対署名の場を公式に設け、国民発案の賛同数が反対数を一定数上回る場合のみ有効数と見なす、といった対処方法も考えられます。

 国民発案によって提出された法案については、通常の法案と同様に、国会における審議と採決を経て成立するとすれば、衆愚化の恐れも緩和されます(修正作業は起草機関に委任…)。たとえ、否決されたとしても、同法案に対する各議員の賛否は、選挙に際しての有権者の判断材料ともなります。本記事は、試案に過ぎませんが、憲法改正の議論が、国民による制度改革論争に繋げることができれば、日本国の政治力アップに資するのではないかと思うのです。

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