時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

明治産業遺産と慰安婦記憶遺産-中韓のダブル・スタンダード

 日本国がユネスコ世界遺産として登録を目指している明治日本の産業遺産。この件に関して、中国と韓国は、登録に反対する姿勢を示しており、日韓間の協議も平行線を辿った模様です。

 ところで、韓国の反対理由とは、軍艦島をはじめ産業遺産には多くの”強制連行”された朝鮮の人々が働かされた場所である、とするものです。少し調べてみればすぐに分かるのですが、”強制連行”の実像とは、募集に応じた自発的就業と戦時徴用であり、韓国側の主張は事実と合致しておりません。しかも、軍艦島飯場には、朝鮮人事業者が経営するものもあり、炭鉱労働者が逃亡するほどの過酷な虐待を受けたとすれば、第一の責任は事業者にあります。この点は、慰安婦問題と共通してます。何れにいたしましても、中韓とも、自国民が虐待を受けた遺産は、世界遺産に相応しくない、という立場なのです。その一方で、中国と韓国は、慰安婦に関しては、ここでも足並みを揃えてユネスコ記憶遺産への登録を目指しております。この件については、明治産業遺産とは全く逆に、自らが被害を被ったことを世界に知らしめるために、積極的に登録を推進しております。

 両国の両遺産登録に対する矛盾する態度は、日本国に対する攻撃材料でであれば理屈は関係ない、とする反日政策によって説明されますが、こうした態度は、ユネスコ世界遺産制度の政治利用以外の何ものでもありません。一度、政治利用の前例を認めますと、今後とも、ユネスコ世界遺産登録は、国家間のみならず、民族や宗教対立を誘発する混乱要因になりかねないと思うのです。

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