時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

首を傾げる”日韓の未来”論

 本日の日経新聞の経済教室欄に、”国交正常化50年 日韓の未来㊤”というタイトルで、神戸大学教授の木村幹氏が日韓基本条約に関する分析を寄稿されておりました。一読いたしましたところ、その内容には、首を傾げざるを得ないのです。

 全体の趣旨は韓国側の主張に沿ったものなのであり、掲載記事の要点は、近年、経済や軍事面で日本国に接近した韓国が、日韓基本条約を基礎とする「条約体制」に不満があるとするものです。条約締結時から80年代までは、韓国は日本国に依存しており、その垂直関係が不満の表明を押さえていたものの、今や、この垂直関係は、韓国が力を付けたことで水平関係へと移行しているのだから、日本側は、韓国を徒に挑発せず、柔軟に対応すべきと述べているのです。この分析において、何が腑に落ちないのかと申しますと、そもそも、日韓基本条約締結時において、韓国側が日本国に対して大幅に譲歩したという認識は、当時の交渉過程の観察から得られる事実とは全く逆です。加えて、国家間の力関係の変化を以って、韓国側の条約に対する不誠実な態度への転換を容認している点は、まことに理解に苦しみます。氏は、”この韓国側の変化を、何かしらの韓国人の民族的特性に求めるのはもちろん適切ではない”と述べているのですが、韓国以外に、国力がアップしたことを理由に、過去の条約を無視し、謝罪と賠償を求める国は他にあるのでしょうか。日本国の世論が、急速に嫌韓反韓に傾いた原因は、まさに、日本国を下に見て身勝手な要求を突き付けたり、名誉を踏みつけている韓国の姿勢にあります(結局は、水平的関係ではなく、垂直的な関係の上下を逆転させただけなのでは…)。

 しかも、韓国の軍事費の伸びがこのまま続けば、自動的に日本国を上回ると氏は力説しており、読者としては、脅かされている気分にもなります。この分析、韓国擁護を目的としているのでしょうが、韓国の異質性をむしろ際立たせているのではないかと思うのです。

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