時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

やはり首を傾げる日韓関係改善論

 先日は、「首を傾げる日韓未来論」という題で、日経新聞の経済教室欄に連載されている”国交正常化50年 日韓の未来”について記事を書いたのですが、同シリーズの最後となる本日の紙面には、世宗研究所所長の陳昌洙氏が寄稿されておられました。

 陳氏の基本的スタンスは、神戸大学教授の木村幹氏と凡そ一致しております。近年の日韓関係の悪化は、韓国における新しいパラダイムの成立(慰安婦や元徴用工に対する追加請求…)、日韓関係の垂直から水平への移行、そして、異なる対中関係の三つの構造変化に求めており、結論としては、国際的かつ長期的な視野からの協力の検討、人的パイプ作り、歴史問題における争点の管理に解決策を求めております。しかしながら、やはり、この見解にも首を傾げざるを得ません。両国間関係の水平化?によって、韓国による一方的な新たなパラダイム設定が正当化されるはずもなく、むしろ、対等なればこそ、条約の遵守義務は強まるはずであることは、既に指摘しました。加えて、構造変化の三つ目である対中関係の違いは、氏の挙げた解決策を困難としております。国際的、かつ、長期的な視野から見れば、中国の覇権主義は、韓国が反中に転じない限り、日韓関係の悪化をさらに促進します。また、解決策の2番目である政策パイプにしましても、内政干渉のルートともなれば、両国において激しい反発を招くことでしょう。さらに、三番目の歴史問題での争点管理も、韓国が、事実を事実として認めず、反日国際プロパガンダを展開することに主たる原因があり、日本側としては、韓国側が主張する虚偽の”歴史認識”を受け入れることはできないのです(既に争点ははっきりしている…)。
 
 最近の日韓関係論は、本質から目を逸らす議論が多く、危機的な状況、とくに韓国側の問題をあたりさわりのない言葉で取り繕っているようにも見えるのです。

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