日韓請求権協定の誤解4-”どんぶり勘定”による韓国の大得
日韓請求権協定に際して、韓国は、十分な支払いを受けていないとして、日本国に対して今後とも戦後補償を求めると息巻いております。日韓交渉の経緯を見ますと、この認識も誤解ではないかと思うのです。
この時の経済協力には韓国側の全請求への補償が含まれたことは、既に先日の記事で指摘しました。それでは、この補償は、韓国に不当に不利であったのでしょうか。事実は、全くの逆です。1960年11月に、韓国側が8項目と共に日本国に示した請求額は、かなり過大に見積もられておりますが、凡そ1億3000万米ドルです(地金・地銀については要払い戻しなので除く…)。ところが、1961年9月に至ると、韓国は、請求総額を8億ドルに大幅に引き上げます。おそらく、”植民地支配”に対する賠償をも主張したのでしょう。実際には、併合時代、韓国が財政上の損害を受けたことはありませんし、逆に、併合時代には、多額の財政移転が実施されていました。また、戦後は、残された日本財産をも獲得しています。国際法においても、合法的な併合に伴う賠償義務はなく、より過酷な植民地支配を受けた諸国も、韓国のような賠償請求はしてはいません。このため、日本側は、この要求を拒絶し、5000万ドルを純請求に対する支払いとし、それ以上については、経済支援の形態をとるとの回答を示すのです(純請求に対する補償は、1962年1月の日本国側の計算では、大蔵省で1600万ドル、外務省では7000万ドル)。しかしながら、ここで再び事態は方向を変え、結局、冷戦の考慮に基づくアメリカからの要請を受ける形で支払額は増額されます。最後は”どんぶり勘定”となり、両国間の交渉は、無償で3億米ドル相当と2億米ドル借款で妥結するのです。この時、純請求権に対する補償も、経済支援に吸収されます(韓国側が請求権を越える額を受け取ったことが曖昧に…)。
ここで見えてくるのは、請求権の解決をめぐる、極めて非対称な日韓のバランスです。日本側による請求権の実質的放棄(朝鮮半島の日本財産は1945年の時点で905億7799万円とも702億5600万円とも…)に加えて、韓国側は、自らが当初算定した請求額をも遥かに越える莫大な資金を日本国から受けとったのですから。日本側も、冷戦の最前線に位置し、かつ、朝鮮戦争により疲弊した韓国に配慮し、この額で了承したのでしょう。にも拘らず、韓国が、これ以上、日本国に対して請求し続けるとしますと、それは、あまりに強欲ではないかと思うのです。
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