時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

日韓請求権協定の誤解3-韓国には日本財産処分権はなかった

 信じ難いことなのですが、韓国には、1965年の日韓請求権協定を不当とし、その破棄を求める声があるそうです。しかしながら、これまで指摘してきましたように、この協定の実態は、冷戦下における西側の韓国支援を目的とした日本国による大幅な政治的譲歩以外の何ものでもありませんでした。

 法理的に見ますと、第二次世界大戦にあって日韓は交戦状態にはなく(韓国は日本の領域の一部…)、日本国に対して韓国は戦勝国の立場にはありません。「日本国との平和条約」の交渉過程において、韓国は連合国の一員として講和条約に署名することを望んだものの、アメリカの判断によって却下されています(ただし、アメリカは、韓国の利益に配慮すると返答…)。結果として、当講和条約では、後日、日本国と協定を結ぶことで両国間の請求権の問題は解決するものとされたのです。このことは、韓国には、戦場となった中国やその他アジア諸国のように、日本国から賠償を受ける権利はなく、朝鮮半島南部に残されていた日本国の残置財産の処分権も得られなかったことを意味します。もっとも、戦勝国に対する残地財産の処分権の承認は、そもそもは、戦争によって生じた損害に対する賠償に充てるための制度ですので、戦争被害がほとんどない韓国には、たとえこの権利が認められたとしても、処分できる日本資産はわずかに過ぎなかったはずです。ところが、実際には、先日の記事で説明したように、戦後、米占領軍政は日本財産を処分し、韓国に引き渡してしまっています(日本側は請求権が消滅したとは見なしていない…)。つまり、韓国は、連合国としての残置財産処分権もなく、また、戦争による損害が存在しないにも拘らず、日本財産をそのまま獲得したことになるのです(日本財産の多くは朝鮮戦争で失われましたが…)。

 日韓交渉時の記録文書は韓国側しか公開しておらず(上記の記事は日本語訳に基づく)、日本側の資料公開が待たれるところですが、韓国は、”敗戦国の日本国には一切の利益を与えない”とする方針で交渉に臨んでおります。結果を見ましても、この協定が、日本側にとって有利であり、韓国側にとって著しく不利であったとする認識は、明らか事実に反していると思うのです。

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