時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

韓国人に徴用による損害は発生していないのでは?

 近年、戦時徴用によって日本国で仕事に就くことになった朝鮮半島出身の人々が、日本企業を相手取り、損害賠償を求めて韓国国内の裁判所に提訴する事件が相次いでおります。先日、一審のみならず、控訴審でも日本企業に賠償を命じる判決が出されましたが、そもそも、戦時徴用において、如何なる個人的な損害が生じたというのでしょうか。

 当時、1938年に制定された国家総動員法やその他の法律に基づき、事業者に対しては、徴用工に対する賃金、宿泊施設、食料…などの提供が義務付けられておりました。朝鮮半島にあっても、大凡の雇用条件は日本人と同じであったはずです。裁判では、朝鮮半島から移送され、日本国内の工場に勤務させられたことを問題視しているのかもしれませんが、日本国内でも、地方から首都圏の工場に配属となった事例は多々あります。しかも、戦争末期、日本国内が朝鮮半島出身者の勤務地となったのは、日本人のみを対象とした徴兵による労働力不足が原因でした(徴用よりも徴兵の方がはるかに義務が重く、命の危険があった…)。確かに、戦時体制にあっては、徴用を拒否することはできませんし、物資不足の中では生活水準も低下はしておりましたが、無賃でもなければ、奴隷的な待遇でもなかったのです。こうした自国民に対する戦時徴用は、日本国のみならず、連合国諸国でも実施されております。仮に韓国が、当時独立国家であったとしたら、同程度、否、それ以上に重い義務を国民は負っていたことでしょう。

 総力戦にあっては、国家が全国民の経済活動を統制せざるを得なくなりがちですが、特別に、朝鮮半島出身者に損害を与えたわけではありません(日本政府から、最低限、生活は保障される…)。あたかも敵国民を強制収容所に押し込め、無賃で過酷な強制労働に従事させたとする韓国側の認識は、実態とは違っているのです。この問題は、世界記録遺産問題とも共通しますが、日本国政府は、徴用工問題をも念頭に、政治的妥協による事実の歪曲だけは、決して受け入れてはならないと思うのです。
  
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