時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

南シナ海問題-違憲論者は海洋安全保障にも反対?

 昨年7月の閣議決定を経た集団的自衛権に関する政府見解の変更を受けて、今年4月27日に、新たな日米ガイドラインが公表されました。新ガイドラインによりますと、少なくとも緊張高まる南シナ海問題については、海洋安全保障の文脈において対応する可能性が高いのではないかと思うのです。

 安保法制に反対している人々は、海洋安全保障にも反対するのでしょうか。海洋安全保障とは、国際法に基づく海洋秩序を維持する活動であり、新ガイドラインでは、平時・有事共に日米の協力を謳っています。ところが、1946年の日本国憲法制定時にあっては、海洋法は未整備でした。ジュネーヴ海洋法条約の成立は1958年であり、海洋法に関する国際連合条約は、1982年です。つまり、海洋安全保障は、日本国憲法第9条が全く想定していない新たな分野であり、いわば、憲法では”空白地帯”なのです。このことは、この領域については、憲法の解釈論はあまり意味をなさず、日本国は、第一義的に、国際法に基づいて、国際社会の一員としての義務を負うことを意味しております。

 仮に、海洋安全保障にも反対となりますと、違憲論者は、無法国家を擁護し、暴力主義を助長することになるのではないでしょうか。今日、憲法が制定された1946年とは全く異なる国際情勢にあり(法の支配の強化…)、かつ、国際法の整備も進んでいるのですから、憲法の空白部分に対しては、国際社会の警察力の観点からアプローチすると共に、憲法解釈にも柔軟性を持たせるべきと思うのです。

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