時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

安保法案―オオカミではなく警察官になる日本

 安保法案については、日本国は、ヒツジからオオカミになるのか、とする批判の声があるようです。憲法第9条は、大人しいヒツジを装う衣であり、今や日本国は、その偽りの衣を脱ぎ捨てて、鋭い牙を剥くオオカミとして立ち現れるというのです。

 果たして、この見解、安保法案の本質を言い当てているのでしょうか。オオカミ論では、日本国の真の姿は凶暴な野獣であり、憲法第9条は、その野獣性を隠す役割を果たしてきたことになります。しかしながら、この見解は、今日という時代を見誤っているのではないかと思うのです。人類が、野獣にも譬えられる弱肉強食の世界を経験してきたことは事実であり、日本ならずとも、オオカミの比喩は、国益に貪欲な国家の一面を言い当ててはいます。しかしながら、国際法の整備が進んだ21世紀にあって、真の脅威とは、全ての国に安全を約束する法秩序の破壊にあります。かつては、国益の衝突が戦争を引き起こしましたが、今日の戦争や武力行使は、違法行為に対する取り締まり行為の側面を強くしているのです。

 この時代の転換を考慮しますと、法の支配を目指している日本国は、安保法制によってオオカミになるのではなく、方向性を同じくする諸国と共に、ヒツジを護る警察官になることを意味します。国際秩序を維持するための武力行使は、国際社会の正義と平和の実現にこそ寄与すれ、決して、他国を侵害するではないと思うのです。

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