時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

エンブレム原案公表-黒のパーツの謎

 2020年の東京オリンピックのエンブレム問題は、原案が修正された事実が明るみに出たことから、佐野氏のデザインの原案も公表されることとなりました。原案から二度の修正を経て最終案へと至っておりますが、佐野氏の最初の説明とは食い違いもあり、疑惑はむしろ広がる一方のようです。

 ところで、原案のデザインを見しても、日本国の国旗を表現したと思われる赤色の円が下の方に配されており、決して好印象を与えるものではありません。その後の二度の修正を経ても、全体的に陰鬱な印象を与えるのは、中心部に描かれている黒色の長方形のパーツが全体の色調を支配しているからです。不思議なことに、他のパーツが色、形、位置に修正が加えられているにも拘わらず、この黒のパーツだけは威圧するかのように不動のままです。最終案が発表された際に、黒については、”全ての色が混ざると黒になるので、多様性を表わす”と説明されていましたが、黒は、むしろ、多様な色彩が融合することで、全て色がその色としての個性を失った状態を意味します。つまり、多様性とは対極の単一性を意味するのです。ですから、この説明自体が”逆さま”なのですが、審査員も、デザイナーも、あくまでもこの黒いパーツを評価して執着した理由が分かりません。

 黒は喪の色であり、祭典に相応しい色ではないことは、誰もが常識として持ち合わせております。にも拘らず、関係者が最後までこの黒いパーツを”死守”しようとしているとしますと、その理由にこそ、この問題の真相を解明する鍵が潜んでいるのかもしれません

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