時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

対中”話し合い”路線のリスク


 集団的自衛権の行使に反対する人々は、常々、”話し合い”こそ最上、かつ、唯一の解決方法であると主張しています。司法解決を言い出さない理由は、警察力や執行力としての武力行使を認めざるを得ないからなのでしょう。

 しかしながら、”話し合い”には、およそ、二つのリスクがあります。その一つは、”孫子の兵法”が薦めるように、戦わずして相手国に屈服させられるリスクです。この場合、主権平等や民族自決の原則も崩れ去り、”奴隷の平和”を強いられる可能性が高く、特に、伝統的な中華思想とそれに基づく冊封体制の復活を目論んでいる中国は、周辺諸国を属国化(植民地化)することでしょう。あるいは、チベットのように協定によって併合され、一方的にジェノサイドを受けるかもしれません。第二のリスクは、たとえ対等の立場において話し合い、両国政府が合意に達したとしても、相手国が合意内容を破る、あるいは、故意に履行しない可能性があることです。中国は、南シナ海での埋め立て作業について、国際社会の批判を浴びたことから中止を約束しましたが、舌の根の乾かない内に、第三滑走路の建設を再開しています。また、アセアン諸国と地域フォーラムにおいて南シナ海での行動規範造りに合意しながら、一向に、作業を始める気配を見せておりません。

 ”話し合い”を主張する人々は、リスク管理の面から見ますと、杜撰でお粗末です。なおも”話し合い”を勧めるならば、是非とも、上記のリスクに対する具体的な対策を示していただきたいと思うのです。

 よろしければ、クリックをお願い申し上げます。