時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

中国スパイ事件-北朝鮮”日本人妻”の子孫の謎

 報じられるところによりますと、中国当局よりスパイ罪の廉で拘束されている日本人男性の一人は、北朝鮮からの脱北者であり、後に日本国籍を取得した人物とのことです。この日本国籍取得には、謎がなわけではありません。

 中国当局が、スパイ行為を推定した理由は、この日本人男性が、再三にわたって中朝国境地帯を訪問しており、しかも、朝鮮族の中国人を同伴していたことにあります。被疑者が日本国のパスポートを所持していたことから”日本人”とみなし、かつ、”日本政府のスパイ”と判断したのでしょうが、北朝鮮脱北者であったとする事実は、この事件が単純ではないことを示唆しております。当該日本人男性が、脱北後に日本国に居住し、日本国籍を容易に取得できた理由は、母親が”日本人妻”であったことによるそうです。両系主義を採用している現行の国籍法では、母親が日本人である場合には、出生に際して日本国籍を認められますが、当該日本人男性の場合には、おそらく、脱北時に成人に達していることもあり、一般の帰化手続きによる取得であったとも想定されます。”日本人妻”の子であれは、国籍法による特別措置により、帰化条件は緩くなります。しかしながら、日本国の法務省は、どのようにして”日本人妻”の子であることを確認したのでしょうか。中国残留孤児の場合には、親族との間でDNA鑑定を実施していましたが、北朝鮮の”日本人妻”の子の場合にも、同様の鑑定作業を行ったのでしょうか。北朝鮮による拉致事件は、日本国内に潜入させる工作員を養成するために、日本語の教師や日本の慣習を教える日本人要員の獲得も、目的の一つであったと指摘されています。

 ”日本のスパイ”を装った”北朝鮮のスパイ”、あるいは、”韓国のスパイ”という可能性もあるのですから、この事件に関しては、慎重な調査が必要なようです。そして、この事件は、日本国政府が、不透明な中朝関係の現状や北朝鮮のスパイ活動の実態を知るチャンスともなるのではないかと思うのです。

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