時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

”アルメニア人大虐殺”が記憶遺産に申請されたら

 信憑性が極めて怪しい中国が申請した”南京大虐殺関連資料”が、ユネスコ記憶遺産に登録がほぼ決定された件について、ユネスコの政治利用が批判されております。この制度、このままの状態では、平和どころか、全世界に争いの種を蒔くことになるのではないかと思うのです。

 例えば、仮に、アルメニアが、”アルメニア大虐殺”を記憶遺産に登録しようと申請した場合、どのような状況が起きるでしょうか。アルメニア大虐殺とは、19世紀から20世紀にかけて、オスマントルコ帝国で起きたとされるアルメニア人に対する虐殺事件であり、犠牲者は、150万人ともされています。アルメニア人は、この虐殺について国際社会において積極的に宣伝活動を行っておりますが、トルコ政府は、この事件について、組織性や計画性を認めておりません。仮に、アルメニアが、この事件を申請するとしますと、トルコ政府は激しく反発し、アルメニア政府のみならず、ユネスコに対しても抗議することでしょう。トルコ・アルメニア関係が決裂状態に至ることは必至であり、ユネスコの記憶遺産制度は、国家間の友好を引き裂く方向に働くことになります。

 このような事件が頻発するようでは、記憶遺産制度は、人類史において記憶すべき価値のある資料の保存どころか、人類史そのものに対立の歴史を刻みかねません。ユネスコの記憶遺産制度は、政治問題化を防止するためにも、抜本的な見直しが必要なのではないでしょうか。

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