時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

”南京大虐殺”記憶遺産登録への対抗策

 中国が申請していた”南京大虐殺”関連資料のユネスコ記憶遺産登録が凡そ決定された件について、日本国の外交的敗北との意見も聞かれます。登録阻止に向けての動き出しも遅く、全てが後手になってしまったからです。

 もっとも、後手であるからといって、悪手であるとも限りません。あらゆる手段を尽くしても登録の取り消しや撤回が叶わなかった場合、対抗策として考えられるのは、(1)日本国が独自に南京事件の登録を申請するか、あるいは、(2)中国側が提供している記憶遺産への日本側資料の追加を要求することです。(1)の場合には、日本側資料は、便衣兵や捕虜の殺害に関する資料となり、少なくとも、中国が主張するような婦女子を含む南京市民30万人の無差別大虐殺を示すものはありません。また、日本軍の南京入場や南京市内等の写真資料や当時の国民党軍の蛮行に関する資料も合わせれば、南京攻略戦の実像が浮かび上がるはずです。(2)の場合も、日本国からの提供資料は基本的には(1)と同じですが、”被害国”の資料のみに依拠して登録を決定したユネスコの不公平性が強調される効果もあります。”歴史認識”が対立している記憶遺産については、双方の側から提供された資料を揃えて登録した方が理に適っていますので、ユネスコも、日本側の提案を拒絶できないはずです。

 日本側からの申請や資料提供は、南京攻略戦において”南京事件”が発生したことは認めつつも、中国が主張する非人道的な無差別大量虐殺の既成事実化を防ぐことは出来ます。”肉を切らせて骨を断つ”ということになるのでしょうが、試してみる価値はあるように思えるのです。

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