時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

中国の対英急接近の意図は?

 今般の中国の習近平主席の訪英は、どこか唐突なイメージを受けます。政治的なタイミングからしますと、先日の訪米を機に、米中関係が決裂状態に至ったことも、中国の”焦り”の原因の一つではないかと思うのです。

 南シナ海では、アメリカが「航行の自由作戦」を遂行する旨を宣言しており、これに対し、中国は、人民解放軍による対応を明言しております。武力行使を示唆している以上、中国は、米中軍事衝突に備えているはずであり、その際の国際社会における対策をも準備していることでしょう。しかしながら、南シナ海の人工島の埋め立てと軍事基地建設、並びに、領海の設定は、国際法に違反しておりますので、日本国をはじめ、国際社会は、アメリカの行為を支持することが当然予測されます。そこで中国は、拒否権を有してはいるものの、まずは、国連安保理常任理事国の一国であるイギリスを懐柔することで、安保理を米仏体中ロ英の2対3の構図に持ち込み、多数派工作を仕掛けるとともに、同時に英連邦の加盟国をも味方に付けようと考えても不思議はありません。オーストラリアでは親中派のターンブル氏が首相に就任し、カナダでも左派政権が誕生しており、中国寄りの発言も目立ってきております。アジアでは、日本国における安保関連法案の成立により、日米同盟の強化はもとより、中国の脅威に晒されている周辺諸国は、急ぎ、中国包囲網の形成に乗り出しています。そこで、中国は遠交近攻策をとり、チャイナ・マネーを呼び水にして遠方の諸国と取り込むことで、対中包囲網をさらに外側から取り囲もうとしているように思えるのです。

 しかしながら、国際社会の法秩序の破壊者である中国に、遠方の諸国は、果たして支持を与えるのでしょうか。中国に対する対応は、国際社会の正義をも問われていると思うのです。

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