時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

”慰安婦妥結”-国際司法の場で争うべきでは?

 本日、安倍首相と朴大統領の間でしばらく途絶えていた日韓首脳会談が開かれ、”慰安婦問題”も議題に上がったそうです。”慰安婦妥結”に向けて交渉が加速されるとの報道もありますが、不安を脳裏を過ります。

 日韓首脳会談に先立って開かれた日中韓三か国による首脳会談では、”歴史問題”について、”歴史の直視”が合意されています。合意されたとはいえ、”歴史の直視”については、日本国と中韓二国とでは、全く解釈が違っています。中韓にとりまして、”歴史の直視”とは、史実としての歴史ではなく、自国の”歴史認識”を受け入れよという日本国に対する要求を意味します。一方、日本国の解釈では、”史実の直視”ですので、この三国合意は、同床異夢に過ぎないのです。慰安婦問題についても、この解釈の違いこそ、越えがたい両国間の溝となっております。韓国は、慰安婦問題について日本国に対して法的な責任を認めるよう要求しながら、責任を明らかにするために必要な事実認定のための検証作業を拒むからです。唯一の”証拠”とされる韓国人元慰安婦の証言を見ても、内容が二転三転しており、証言の検証だけでも偽証か否かを見極めることができるのですが、韓国は、こうした裏を採る作業を一切行っていませんし、日本国側から提起された疑問にも答えようとはしていません。この状態で”慰安婦問題妥結”となりますと、史実は闇に葬り去られてしまいます。

 報道のニュアンスからしますと、法的ではなく、人道的な措置として「アジア女性基金」に類する支援を日本側が実施することが”妥協案”なようですが、事実関係を明らかにするためには、むしろ、国際司法の場で争った方が賢明なのではないでしょうか。人道的な措置は、法的責任は問われないのですから、一見、日本国にとって有利なように聞こえますが、その実、史実が曖昧となり、逆に、韓国が主張する”日本軍20万人朝鮮女性強制連行説”が既成事実化されるリスクが高いのではないかと思うのです。

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