時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

日本大使館前慰安婦像撤去でも解決しないのでは?

 一部メディアでは、複数の日本国政府高官の弁として、慰安婦問題に関して、日本国政府がさらなる財政支援を実施する代わりに、在韓日本大使館前の慰安婦像の撤去を要求していると報じております。この記事、”飛ばし記事”であることを祈るのみです。

 日本国政府が、日本大使館前の慰安婦像の撤去を要求する背景には、この要求に関しては、「外交関係に関するウィーン条約」による法的根拠があるからと推測されます。当条約の第22条によれば、接受国には、公館の威厳の侵害の防止する義務があります。しかしながら、当条約を根拠としているとしますと、公館に関連しない他の慰安婦像はそのまま放置されることになりますし、米国マグロウビル社の教科書等をはじめ、韓国内外の歴史記述も韓国側の主張通りとなります。たとえ日本大使館前の慰安婦像を撤去したとしても、中国や民間団体の国際プロパガンダ活動は続くでしょうし、反日勢力が存在する限り、日本国の名誉回復を含む、この問題を取り巻く状況の改善は見込めないのです。また、過去の経緯を振り返れば、慰安婦像の撤去に韓国に対する蒸し返し予防効果があるとも思えません。

 慰安婦像の撤去と引き換えに、日本国政府が韓国政府対して財政支援を実施するとしますと、おそらく、国際社会は、日本が”日本軍20万人朝鮮女性強制連行説”を事実と認めたと受け止めることでしょう。その一方で、日本国の世論は、この”妥結”を許さないのではないでしょうか。中途半端な妥協は、さらに問題を将来に持ち越すことになりかねず、やはり、法的根拠に拘ればこそ、日韓請求権協定に基づく仲裁によって解決を図るべきではないかと思うのです。

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