時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

『1984年』の世界に近づく韓国

 韓国では、国定教科書が復活し、遂に、歴史認識は国によって造られるものとなりました。この国家体制、ジョージ・オーウェルの『1984年』を彷彿とさせます。この小説、国家的な歴史改竄を目的に、わざわざ一省を設けている独裁国家が舞台なのですから。

 王朝交代の度に、新王朝を正当化するための史書が編纂されてきた中国も、国定教科書には違和感はないのでしょうが、長らく中国を宗主国としてきた韓国でも、歴史の国定化は、古来の慣習の再導入という面もあるのかもしれません。しかしながら、近現代における歴史の管理・統制は、史書の編纂に留まらず、共産主義と習合することで、より強固な”体制化”が起きているようにも見えます。先日も、慰安婦が職業婦人であったことを記した『帝国の慰安婦』を執筆した女性の大学教授が、在宅起訴されたと報じられました。国家機関が直接に”歴史”に関する取り締まりを実施し、国定の歴史に異を唱えた者は犯罪者として処罰されるのですから、自由主義国から見ますと、驚愕すべき言論の自由、出版の自由、そして、学問の自由に対する弾圧です。その間、国家機構では、国定の歴史を維持し、全ての出来事をこれに合わせるべく、公務員たちが命令通りに働いていることでしょう。首脳会談において日本側から慰安婦像の撤去が要求されたとする情報について、隠蔽するかのように否定する韓国側の態度も、その兆候かもしれません。

 韓国の若者の多くは、自国をヘルコリアと称して悲観しているそうですが、ヘルコリアこそ、まさしく、『1984年』の世界なのかもしれません。国民が事実を知ることさえできない世界、その誰もが恐るべき世界に、韓国は今、向かっているのではないでしょうか。

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