時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

親中派が最も中国を知らないパラドクス

 日本国では、明治以前に遡って中国の古典が学ばれており、孔子孟子氏の書のみならず、『三国志演義』などの小説も広く読まれておりました。学校の漢文の授業で、「前赤壁賦」を口ずさんだ記憶のある方もおられるかもしれません。

 中国の古典は、日本国での受容に当たっておどろおどろしい権謀術数の部分は相当に濾過されておりますが、最近に至り、マイケル・ピルズベリー氏の書著『China 2049』も出版され、アメリカでも、中国の戦略は、古代の史書から導き出された教訓に基づくのではないかとする見解が示されるようになりました。かつては親中派として知られ、様々なルートから中国情報に直に接してきたピルズベリー氏の警告なだけに説得力があります。ところで、中国の”戦国思考”に関して思うところは、日本国では、親中派と呼ばれる人ほど、実のところ、中国を知らないのではないか、ということです。中国の古典に親しんできた人々は、多少美化されているとはいえ、中国が、栄枯盛衰、謀略が渦巻き、一瞬の隙も油断も許されない過酷な歴史を歩んできたことを心得ています。この歴史を通暁していれば、中国に対して接近することには危険が伴うことを理解しているはずなのです。ですから、”親中派の看板”とは裏腹に、警戒心なく中国に近づいている人々は、中国という国柄を理解していないとしか言いようがないのです。

 仮に、中国を熟知しつつ”親中派”の日本人がいるとしますと、それは、何らかの理由で中国の手先となってしまった人なのかもしれません。つまり、確信的な協力者である可能性が高いのです。”親中派”の人々には、是非とも、中国に対する理解を伺ってみたいと思うのです。

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