時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

選択的夫婦別姓問題-家族同姓制度vs.家族別姓制度

 選択的夫婦別姓については、昨日の記事で提起しました”お墓問題”に加えて、様々な問題が潜んでおります。本日は、家、あるいは、家族崩壊のリスクについて指摘したいと思います。

 選択的夫婦別姓を支持する根拠としてしばしば挙げられるのが、憲法の定める男女平等の原則ですが、現行の民法の規定でも、婚姻時における戸籍の姓の選択は男女とも平等ですので、必ずしも男女不平等とは言えません。問題の本質は、家族同姓か、否かにあります。夫婦別姓制度とは、家族別姓制度と言い換えることができるのです。家族別姓制度となりますと、当然に、子が誕生した際に、父母のどちらか一方の親としか姓を共有できません。姓とは、その起源からして特定の血縁集団への属性を表わしますので、家族別姓制度とは、家族が同一の帰属単位とならない、あるいは、同一家族の一員であることを表わす共通の表記を失うことを意味するのです。つまり、○○家、という概念さえ消滅することになります。△△☆☆という氏名の子は、○○家の一員ではなく、○○××さんと△△□□さんの子でしかないのです。結果として、家族内に二つの姓が同居することになり、家族としての一体感が希薄となることは十分に予測されます。実質的には家族であっても、それを表記する姓という同一名称が存在しないのですから。

 民法制定以前に見られる伝統的な慣習としての夫婦別姓は、男系血族を中心に据えた上で、その系統に入る女系の出自を表わしており、子の姓は全て男系を継承しますが、現代の夫婦別姓の主張は、男女平等の原則をベースにしていますので、親子間でも別姓とならざるを得ません。このように考えますと、”夫婦別姓制度は、家や家族の絆の破壊を目的としている”とする批判も、あながち的外れではないと思うのです。

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