時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

夫婦別姓問題-”お墓・先祖供養法人・ファンド”の提案

 選択的夫婦別姓問題の背景には、”後継ぎのいない家”の問題が指摘されております。少子高齢化のため、家名に加えて、お墓の継承も難しい家が少なくないのです。そして、この問題、檀家減少による地方や過疎地のお寺の存廃問題とも繋がっています。

 それでは、こうした問題は、どのように解決したらよいのでしょうか。幾つかのケースが想定できるのですが、第一に、先祖代々の墳墓の継承者が途絶えるケースについては、長男の家族しか納骨できないとする慣習を緩めることで、改善を図ることは出来ます。共通の祖先を数代前に遡るといった相当に離れた親族関係にあっても、継承者の承諾次第で継承可能となれば、祭祀や墳墓に関する相続の範囲は広がります。その一方で、お墓の所有そのものを個人ではなく、法人化するのも一案です。都会に住む子孫たちを含めて、先祖を同じくする人々が法人を組織し、そのお墓に入る予定の人々が資金を出し合い、お墓の維持と先祖供養のためのファンドを設立するのです。墓所のあるお寺、あるいは、墓苑に対しては、これらのファンドから費用が支出されますので、お寺や墓苑の経営も安定します。この方法が広がれば、都市居住者向けの墓苑の乱開発を抑えることもできますし、一家族当たりの負担も減ります。また、法人内の一つの家族で継承者が途絶えたとしても、他の家族によって引き継がれますので、無縁仏にはならない安心感はあります。

 現行の民法第897条では、祭祀に関する継承主体を人としておりますので、法人への継承には、民法改正を要するかもしれません。この案によって、全てが解決するわけではありませんし、個人主義的な立場からの反対の声もあるかもしれませんが、全ての国民が当時者ですので、お墓問題についても、真剣に知恵を絞るべきではないかと思うのです。

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