時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

英文の方が酷い日韓慰安婦合意声明

 慰安婦問題に関する昨日の日韓合意については、日本国内に失望と怒りが広がっております。あたかも日本国側が韓国側の歴史認識を認めたかのような表現は、売国度において河野談話さえ超えたとする意見も聞かれます。

 ところで、外務省のホームページには、日韓外相にって公表された声明文が掲載されております。この声明文は、両国の言語の他に、英訳文のページも設けられているのですが、この文章を読みますと、海外メディアが、当合意について、日本国政府が、”性奴隷”説を認めたと発信した理由が分かります。何故ならば、日本語の表現よりも、つまり、日本国の立場よりも、遥かに韓国寄りの立場で表現されているからです。特に注目すべきは、慰安婦の人数に関わる表現です。日本文では、”多数”と簡単に表記されておりますが、英文では、”large numbers”とあり、語彙の持つ印象としては、”多数”以上に強い”夥しい数”となります。実際には、事業者等に騙された犯罪被害者は、全体から見れば少数にも拘わらず、この言葉を使用しますと、韓国の歴史認識である”20万人強制連行説”がイメージされてしまうのです。しかも、次節では”responsibilities from this perspective”と記されており、あたかも、日本国政府が、この”歴史認識”に基づいて責任を感じていると解釈されかねないのです。

 政府であれ、メディアであれ、諸外国では、日本文ではなく英文で合意内容を読むのですから、このような表現では誤解を生みます。あるいは、日本国民に対しては、屈辱的譲歩の印象を和らげる一方で、国際社会に対しては、韓国の”歴史認識”を受け入れたとアピールしたかったのでしょうか。一体、この合意、誰のためになされたのでしょうか。

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