時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

”歴史認識問題”は妥協が不可能な分野-日韓慰安婦合意の問題点

 昨年末の日韓慰安婦合意については、これまで対立していた両国が歩み寄ったことにこそ、意義があるとする意見もあります。しかしながら、”歴史認識問題”とは、”足して二で割る”方式の妥協が許されない分野なのではないかと思うのです。

 何故ならば、”歴史認識問題”を外交上の交渉事項として認めることは、以下の二つの点において反知性的な行為であるからです。第一に、”歴史認識”が外交問題となること自体、半ば、歴史を史実ではなく”認識”と見なす相手国の土壌に上がったことになります。歴史認識主義とは、史実に忠実で客観性を重んじる歴史実証主義とは異なり、歴史を政治の道具と見なす考え方です。故に、自己正当化の政治的操作として、後から書き換えることが許されるのです。過去には古今東西で散見されましたが、今日では、共産主義といった全体主義国家の特徴でもあります。歴史認識外交問題と認めた時点で、日本国政府は、反知性側に与したことになります。第二に、たとえ”認識”が複数存在していたとしても、歴史の事実は一つしかありませんので、外交上の合意で妥協することは、政府が、事実を無視して”虚偽”を認めるという忌々しき事態を招きます。これもまた、反知性的であると共に、不道徳ですらあります。しかも、事実を曲げてまで相手方の”歴史認識”を認めることは、外交的な敗北となります。

 日韓慰安婦合意が、知性の否定の上に成立したとしますと、たとえ”不可逆的解決”と銘打ったとしても、やがて、客観的な事実から覆され、無意味なものとなることでしょう。日韓慰安婦合意は、結局は、日米韓の”政治的妥協の産物”としてしか歴史に残らないと思うのです。

 よろしければ、クリックをお願い申し上げます。