時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

中国のシャープ攻略を推理する

 日本国の大手家電メーカーのシャープは、台湾の鴻海に買収される公算が高くなりました。”偶発債務”の問題はあるものの、3月上旬にも契約が締結されるとの報道もあります。

 中国黒幕説は既に指摘されてきましたが、今般、シャープ社長と鴻海会長との会談が中国で開かれたことで、この説は、俄然信憑性を増すことになりました。そして、この一連の買収劇は、用意周到に仕組まれた観があるのです。シャープ側が全会一致で鴻海への身売りを決定した理由は、三菱UFJとみずほの両銀行の意向が強く働いたとされています。メガバンクの二行による買収案支持が決め手となったわけですが、両行については、先日、興味深い紙面に記事が掲載されていました。両行は、日本の銀行としては初めて中国の社債発行銀行に指定されたというのです。中国債権の取扱銀行の地位を獲得したわけですが、憶測の域は出ないものの、中国のことですから、何らかの”見返り”を求めた可能性もあります。経済が減速する中、習政権は、技術力を有する海外大手の買収に積極的に取り組んでおり、シャープの液晶、太陽光発電、並びに、複写機等の技術は喉から手が出るほど欲しかったはずです。シャープと鴻海のトップ会談の地が中国であったことは、中国が、保証人、否、真の”買収者”として姿を現したということなのでしょう。

 外堀を埋められ、ついに、内堀まで埋められてシャープは陥落したわけですが、シャープ買収による他の日本企業の苦境は、これから始まります。中国が、日本企業の得意分野において安値攻勢をかけてくると予測されるからです。シャープ側は、技術は提供しないことで鴻海への買収に合意したとされておりますが、中国も鴻海も、狙いは技術力なのですから、この約束もあててにはなりません。かくも易々と、中国の国家戦略に飲み込まれるとしますと、日本国の政府も企業も、あまりに危機意識が薄すぎるのではないかと思うのです。

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