時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

何故韓国は国際司法機関に慰安婦問題を訴えないのか?

 慰安婦問題をめぐっては、韓国政府の行動には、不可解な点があります。それは、先日の国連女子差別撤廃委員会での発言が示すように、”国際社会が判定した”と断言しながら、実際には、国際司法機関に法的判断を仰いでいないことです。

 日韓請求権協定では、両国間で解釈や実施をめぐる紛争が発生した場合、外交上の手段で解決できない場合には、仲裁委員会を設けると規定されています。慰安婦に問題に関する韓国側の基本的なスタンスは、”当協定では解決していない”とするものですので、そのように主張するならば、まずもって、この協定のに基づき、仲裁委員会の設置を試みるべきでした(もっとも、過去に試みたところ、仲裁を引き受ける国がなかったとも…)。その他にも、協定上の問題であれば、国際司法裁判所にも管轄権がありますので、当裁判所に訴えることもできたはずです。司法機関による証拠に基づく”事実認定”を経ていないのですから、日本国政府が、政治的妥協を示したとしても、慰安婦問題については、国際社会から判定を受けているわけではないのです。否、今般の回答に先立って、国連の女子差別撤廃委員会が日本国政府に質問状を送付したことは、国際社会は、この問題について、事実関係を正確には掴んでいないことを示しています

 実のところ、”不可逆的解決”を模索するならば、司法解決の方が遥かにその効果はあります。法廷の場で、”日本軍20万人朝鮮人女性強制連行”の事実がなかったことが明確となれば、以後、韓国のみならず、如何なる組織も、この説を流布することはできなくなるからです。昨年末の日韓合意は、この点に鑑みましても、リスクを多々残すと共に、いかにも中途半端であったと思うのです。

 よろしければ、クリックをお願い申し上げます。