時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

高浜原発停止の仮処分-司法の越権行為

 先日、大津地方裁判所は、高浜原子力発電所の原子炉第3号機と第4号機を停止する仮処分を決定いたしました。原告団を支援する人々の中には、”三権分立が働いた”として絶賛する声も聴かれますが、逆なのではないかと思うのです。

 権力分立の意義とは、立法、執行、司法の三権をその役割に即して別々の機関に割り振ると共に、これらの間で相互にチェック・アンド・バランスを図ることで、一つの機関の”暴走”を防ぐことにあります。いわば、権力集中に対する”暴走抑止”のための仕組みなのですが、今般の大津地裁の仮処分決定は、司法権が、明らかに行政権に踏み込んでおります。法律は、原子炉の安全性を判断する権限を原子力規制委員会に付与しておりますので、裁判所には、安全性判断に関する権限はないのです。原子力規制委員会は、世界で最も厳格とされる安全基準を作成し、厳正な審査の後、高浜原発の3号機と4号機に合格のお墨付きを与えています。

 裁判所は、法に照らして原子力規制委員会に違法行為や脱法行為がある場合にのみ、それを審査することができますが、大津地裁は、法的根拠を示さずして仮処分を認めてしまいました。司法機関が行政権をも行使するとなりますと、これは、権力分立の意義を踏みにじる行為に他なりません。この件に関して三権分立を働かせるとすれば、大津地裁判事の越権行為に対する立法府による弾劾裁判となるのではないかと思うのです。

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