時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

高浜原発仮処分への疑問

 昨日は、高浜原発に関する大津地裁の仮処分について、司法の越権の観点から記事を書きました。本日は、仮処分の意義から、当問題に迫ってみたいと思います。

 裁判所に、何故、仮処分を決定する権限があるのか、と申しますと、その理由は、裁判の正式な判決を待っていたのでは、取り返しのつかない損害や被害が発生する場合があるからです。裁判の間に、問題とされる行為が継続されたままでは、損害や被害が既成事実化、あるいは、増大してしまいます。こうした事態を回避するために、裁判所は、即時的な手段としてその行為を止めさせることができるのです。それでは、この観点から見ますと、高浜原発の停止は、仮処分の対象として妥当なのでしょうか。少なくとも、仮処分の申し立てた時点と正式の判決が下されるまでの間に、高浜原発の状況には変化はありません。仮に、再稼働されたとしても、1000年に一度と言われるような大規模な地震津波に襲われない限り、安全性には問題がないからです。つまり、損害や被害の拡大を防ぐために一分一秒を争う程の緊急性は極めて低く、仮処分の対象としては妥当性に欠けると言わざるを得ないのです。しかも、地裁の裁判官は、安全対策が不十分であることを仮処分の理由として挙げておりますので、継続している損害・被害の防止を目的に仮処分を決定したわけでもありません。

 仮処分には即効性がありますので、申し立てを認めるに際しては、誰もが納得する理由が必要です。電力会社側から見ますと、仮処分による稼働停止によって営業上の損益が生じるのですから、継続的な損害や被害を発生させているのは、裁判所とする見方もできます(仮処分が続く限り、損失額が拡大してゆく…)。また、原発再稼働によって電力料金の値下がりの恩恵を受けるはずであった一般国民の利用者も、間接的に損失を被っております。果たしてこの仮処分が適切であったのか、まことに疑問に思うところなのです。

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