時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

「パナマ文書」-タックス・ヘイブンこそ増税の原因?

 公開された「パナマ文書」をめぐって、ネット上では、タックス・ヘイブンを利用した企業の租税回避行動こそ、財政悪化の真の原因である、とする説が唱えられております。消費税増税問題も絡むだけに、国民の関心も高いはずです。

 財政悪化タックス・ヘイブン要因説とは、アベノミクス等の政策効果によって企業業績は大幅に改善されたものの、企業の多くが、タックス・ヘイブンに設立したダミー会社に利益の大半を移してしまい、歳入増加には繋がらなかった、というものです。一説によりますと、日本国は、世界で第2位のタックス・ヘイブン投資国なそうです。この説によりますと、企業は、タックス・ヘイブンの子会社名義で、社内留保として資金をため込んでいることになりますが、実際には、これらの資金は、眠ったままなのでしょうか。社内留保であれば、国内に還元されませんので、この説も頷けます。それとも、賃上げ、設備投資、研究開発費、株主配当、M&A資金…などとして、既に使われているのでしょうか。この点を明らかにしませんと、財政悪化とタックス・ヘイブンとの因果関係を明らかにすることは困難です。また、法人税率の軽減も、既に大多数の企業がタックス・ヘイブンを利用しているのであれば、無意味ともなります。仮に、法人税率を下げるならば、租税回避行為を厳重に規制しないことには、国民も納得しないことでしょう(歳入が増加すれば、消費税率上げも必要なくなる…)。

 日本国政府は、「パナマ文書」の調査には消極的なようですが、当文書は、国家の財政に密接に関わるのですから、放置されて良いはずもありません。脱税やマネーロンダリングといった犯罪関係に関しては、司法や国税庁に任せるとしても、財政分野につては、適性な税制を実現するためにも、政府が、正確に企業の財務内容と資金の流れを把握すべきではないかと思うのです。

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