時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

トランプ現象-”政治に置き去りにされた国民問題”

 ライバル候補の撤退により、共和党の大統領候補の指名を確実にしたトランプ氏。氏の言動については、兎角に暴言として批判されがちですが、トランプ現象は、今日、凡そ全ての諸国において顕在化している”政治に置き去りにされた国民問題”を提起しているように思えます。

 今日、日本国においても、アメリカの新自由主義的な政策が追求されており、この傾向は、与野党変わりはありません。移民政策ひとつ見ても、左右に大差は見られないのです。それでは、新自由主義の最前線であるアメリカはどうでしょうか。アメリカ経済は、年2.2%程の経済成長率を示しており、リーマンショックを経つつ、表面上は堅調に見えます。しかしながら、その一方で、貧富の格差の拡大と中間層の崩壊は、アメリカ社会に深刻な問題を引き起こしています。移民パワーは経済成長を押し上げると主張される一方で、現実には、一般のアメリカ人は、移民の増加による失業や賃金の低下に見舞われており、決して新自由主義的政策の恩恵を受けているわけではありません。こうした不満が、トランプ氏待望論に結びついているとしますと、日本国もまた、他人事ではないのです。

 経済は成長しても、多数の国民が政治から置き去りにされ、生活不安を抱えるとしますと、新自由主義は、果たして与野党上げて推進すべき政策なのでしょうか。トランプ現象は、今日の日本国の政治のあり方をも問うていると思うのです。

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