時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

パナマ文書が暴くもう一つの政治問題

 パナマ文書と申しますと、企業や個人を含む富裕層の税逃れを暴く文書として、5月10日の開示が待たれております。一方、この文書は、特に日本国の政治において、もう一つの悪しき一面を暴いております。

 パナマ文書では、諸外国の政治家の名が挙がっており、アイスランドでは、首相辞任の事態にまで発展しました。一方、パナマ文書には、日本国の政治家名は殆ど見当たらないとされております。その理由は、ある情報記事によりますと、日本国では、政治家は、政治団体に寄付することで課税回避ができるからなそうなのです。日本国そのものが、政治家にとりましては、”パナマ”なのです。しかも、相続税についても、政治団体を子弟に継承させる方法で、節税が可能とされています。仮に、この説明が正しければ、何故、日本国の政治家には世襲が多いのか、その理由も分かります。

 政治家個人にとりましては、合法的な節税対策なのでしょうが、日本国の政治にとりましては、この仕組みは、深刻なマイナス要因となります。第一に、政治団体世襲的な継承は、特定の国民に対する優遇措置となり、政治参加における国民間の機会の平等に反します。政治団体を継承した国民は、資金面においても、選挙において圧倒的に有利となるからです。この状況は、民主主義の危機でもあります。第二に、政治家の世襲制が固定化すれば、同然に、日本国の政治の質も劣化します。政治的能力は、必ずしも子孫には遺伝しないからです。第三に、同制度は、政治家に特権を与えており、この仕組み自体が、政治家の租税回避行為となります。国民の政治家に対する不信感は、さらに深まることでしょう。

 このように考えますと、たとえパナマ文書に日本国の政治家の名が掲載されていなくとも、日本国の政治家にまつわる租税制度の問題点を明らかにした点において、パナマ文書には意義があるのではないでしょうか。パナマ文書は、やはり、重要な『暴露の書』であると思うのです。

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