時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

オバマ大統領広島演説-政治と道徳

 先日のオバマ大統領の広島演説において、強く印象に残ったのが、最後のフレーズに登場する”道徳の目覚め”という言葉でした。核廃絶の道が遠いことは誰もが知っており、こうした言葉は理想論として受け流されがちですが、今日ほど、実のところ”道徳の目覚め”を必要としてる時代はないようにも思えます。

 政治の世界では、兎角に道徳という言葉は軽く見なされがちです。何時の頃からか、政治家は、清濁併せ飲み、海千山千を渡れるような小悪党の方が良いとするような風潮も見られるようになりました。しかしながら、政治に対する信頼が失われている今日、来し方を振り返りますと、政治の劣化には、こうした非道徳的な政治家を容認する国民の姿勢にも問題があったのかもしれません。否、メディアなどによって、そのような方向に国民が知らず知らずのうちに誘導されてしまっていた可能性もないわけではないのです(政治家に道徳や倫理を求めるのは、子供じみていると嘲笑する態度こそ、真に必要なものから目を逸させる騙しのテクニックかも知れない…)。政治は、人間の営みである以上、国際政治においても、政治家の道徳心の欠如は、国際紛争や摩擦の主要な原因の一つです。現に、中国や北朝鮮といった非民主的な国家は、国際法秩序を破壊し、暴力主義を以って周辺諸国に脅威を与えようとしています。仮に、こうした諸国の為政者たちに一般的な道徳心があれば、国際社会は、より平和を享受し得たことでしょう。道徳心が眠ったままであるか、あるいは、そもそも存在していない人物が為政者になることほど、人々を不幸にするものはありません。

 現状を客観的に観察しますと、倫理的な発展を抜きにして、人類が望ましい未来を手にすることは不可能なように思えます。少なくとも政治家に関しては、高い道徳心を基準に据えて選出しないことには、より良き国も国際社会も遠のくばかりではないかと思うのです。

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