時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

イギリスEU離脱決定-国民投票擁護論

 イギリスのEU離脱決定を受けて、日本国内でも急激な株価下落が起き、予想外の混乱ぶりに、国民投票という手段を批判する声も聞かれます。我が国では、国民投票制度は憲法改正手続き以外では導入されていないものの、頭から否定すべき制度とは思えないのです。

 国民投票批判論の根拠とは、大衆迎合的であり、衆愚に陥るとするものです。この批判には、今般のイギリス人の決定は間違いであり、感情に流された大衆は愚かであるとする前提があります。つまり、”大衆=愚か者=誤った判断”の構図で判断しているのです。しかしながら、それでは、専門家である政治家は皆賢く、常に正しい判断をなすのか、と申しますと、そうとばかりは言えないのは、政治の現状が示しております。また、特にイギリスの国民投票で注目すべきは、一般のイギリス人が、マスコミの誘導に流さていない、という側面です。衆愚政治とは、とかくにデマゴークとセットなって批判されますが、今般に限っては、逆に、煽動による投票結果ではないのです。大衆=騙されやすい愚か者であれば、結果は逆になっていたことでしょう。また、国民投票を実施しなければよかった、とする批判は、国民には選択権を与えるべきではない(国民の声には耳を傾けるな)、とする主張と同義となり、民主主義の否定にもなります。

 果たして、今般のイギリスの国民投票の判断が誤りであったのか、その歴史的な判断は、今後の展開を待つこととなりましょう。案外、人類の破滅へと向かう道から引き返すチャンスをもたらした可能性もないわけではないと思うのです。

 よろしければ、クリックをお願い申し上げます。