時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

正戦論-中国の暴力への対抗

 日本国では、憲法第9条を背景に、戦争を無条件に絶対悪とする主張が声高に叫ばれてきましたが、国際法の歴史を振り返りますと、”正しい戦争とは何か”という正戦論は重要なテーマとして議論されてきました。今日、中国が、一方的に侵略戦争を仕掛ける構えを見せている中、日本国でも、改めて、正戦論を考えてみる必要がありそうです。

 国際法の父とされるグロティウスは、正しい戦争、即ち、正戦として、(1)防衛戦争、(2)自国の権利が侵害された場合の権利回復のための戦争、(3)犯罪行為を行った国に対する制裁戦争、並びに、(3)圧政に苦しむ他国の臣民を保護するための人道的介入戦争を挙げています。仮に、こうした正戦が認められないとしますと、(1)侵略、(2)他国の権利の侵害、(3)国際犯罪の放免、(4)圧政、が容認されることになります。つまり、正戦とは、国際社会において正義に基づく秩序が実現するための必要不可欠な手段なのです(治安維持のための警察権力と同じ…)。そして、仮に、日本国が戦争=絶対悪の立場に立ちますと、正戦もまた否定されてしまいます。即ち、国際社会において正義は実現せず、暴力と恐怖による支配に屈することになるのです。

 仲裁裁判の判断が示される12日を前にして、中国は、周辺諸国に対する軍事的な挑発をエスカレートさせています。暴力に対しては言葉も法も通じない以上、万が一の場合には、日本国も、正戦を闘う覚悟を固める時期に来ているのではないかと思うのです。

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