時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

中国を擁護する人々に倫理観はあるのか?

 今月12日に常設仲裁裁判所で示された仲裁判決は、中国に対して極めて厳しい内容となりました。しかしながら、考えてもみますと、中国に厳しいというよりも、従来の対応が甘すぎたとも言えます。

 何故ならば、中国の南シナ海での”領土拡張”は、武力による侵略以外の何ものでもないからです。中国が歴史的権利として主張してきた「九段線」は、本判決で完全に否定されましたが、中国は、これを根拠として、一方的に他国から島や岩礁を奪ってきました。パラセル諸島は台湾とベトナム西沙諸島の戦)から、スプラトリー諸島岩礁は、ベトナムとフィリピンから奪いました。スカボロー礁についても、フィリピンが既に自国への編入を済ませていたにもかかわらず、2013年には一方的に軍事施設の建設を開始します。さらに「九段線」の主張は、EEZとの接触からマレーシア、ブルネイ、そして、インドネシアとの間にも摩擦を起こしており、中国による拡張主義に対して、どの国も深刻な脅威を感じていたのです。この経緯をつぶさに検証すれば、誰もが、武力によって一方的に現状を変更し、今もそれを続けている”中国が悪い”と判断するはずです。ところが、マスコミなどを見ますと、必ずしも中国批判一辺倒ではなく、中国の立場に理解を示したり、専門知識を駆使してもっともらしい擁護論を展開する識者もおります。

 このような人々には、倫理観や道徳観というものがあるのでしょうか(侵害行為を認めている?)。それとも、暴力、または、チャイナ・マネーに屈しているのでしょうか。中国の行為は、国際法秩序を根底から破壊しかねないにも拘わらず、それを擁護するとしますと、中国による法秩序破壊活動の共犯者となるのではないかと思うのです。

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