時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

移民による受入国の伝統・慣習排斥問題

 先日、イギリスでは、移民問題が軸となって国民投票が実施され、EUからの離脱を選択しました。この件については、経済的な理由からの説明が散見されますが、移民の増加に伴う社会・文化的変化にも関心を払うべきではないかと思うのです。

 イギリスの公共放送であるBBCでは、アナウンサーをはじめ、多様な人種・民族の人々が働いています。このため、かつての標準英語とされた”BBCイングリッシュ”は既に聞かれなくなったのですが、日本国内でも、同様の現象が起きています。海外からは、日本国は移民が少ないと見なされていますが、特定の業界では、採用枠を設けたり、移民系コネクションを通して在日韓国、朝鮮、中国の人々が数多く雇用されており、特にマスメディアは、その比率が高いことで知られています。この結果、外国の風習が電波を介して広まるという奇妙な現象が起きています。NHKの画面の色使いは明らかに中華風です。また、最近、問題視されてきたのが、韓国の礼法である”コンス”と呼ばれるお辞儀であり、お腹に手を当てて、肘を張って頭を下げるという儒教風の作法です。信じがたいことに、企業等の礼儀作法のセミナーで採用されたため、全国的に広がってしまい、デパートやスーパー、さらにはコンビニなどでも見かけるようになりました。批判の声が上がったため、今では、一時期よりは減少傾向にあるようですが、”郷に入っては郷に従え”ではなく、その国の伝統文化が移民の出身国のものに取り換えられてしまうケースもないわけではないのです(移民差別どころか、逆に、受け入れ国の慣習や伝統が排斥されてしまう…)。

 しばしば、移民政策は、経済効果を以って肯定的に評価されますが、社会・文化的変化に対しては、無視されがちです。しかしながら、自らを取り巻く生活空間や慣習等における変化が一般の人々に与える警戒感や不快感を考慮しますと、後者の側面も、移民問題の重要な論点なのではないかと思うのです。

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