天皇の役割とは-世界の中の日本の視点
今日、一国主義的な歴史観は疑問に付され、日本の歴史もまた世界史の中から理解すべきとする論調が強くなっております。諸外国との接触がない状態では、前者でも構わないのでしょうが、自国の歴史的出来事が、世界的な動きの影響を受け起きている場合には、後者の立場に立ちませんと、事実を正確に把握し、的確な評価を下すことはできなくなります。
この点において、日本の歴史理解の弱点となっているのは、大航海時代の幕開けの時期と凡そ重なる戦国時代と、江戸期の鎖国体制に終止符を打った幕末から明治にかけての時期です。そして、天皇の役割につきましては、王政復古が唱えられ、大政奉還のもと、太政官体制への復帰を目指しつつ、明治維新を機に一新されるのです。ここに、立憲君主型の天皇が現れるのですが、当然に、江戸時代以前の祭祀中心の天皇の姿とは、齟齬をきたすことになりました。
そして、明治維新の背後には、イギリスやオランダ等海外諸国のみならず、イエズス会や東インド会社などの諸勢力の積極的な関与があったことも、今日では常識となりつつあり、これらの勢力が望んだ”天皇の役割”、否、”日本国の役割”をも想定せざるを得ないのです。
この側面から明治期の統治体制を眺めてみますと、現代という時代に、明治憲法下の天皇の役割を復活させることには疑問があります。そしてさらに深刻なことに、今日、またしても、ある特定の勢力が望んだ”天皇の役割”の文脈において、”生前退位”問題が持ち上がっている可能性さえ推察されるのです。日本国は、アジアにあって独立を貫いた国ではありますが、異民族支配の方法は、直接的な植民地化のみではありません。歴史に学び、今度ばかりは、より慎重な見極めが必要なのではないかと思うのです。
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