時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

日本人の起源とは-天皇陵の発掘が必要では

 先日、青銅製の歯車式の複雑な仕組みを持つ古代ギリシャの天体運行計算機である「アンティキティラの機械」が発見された沈没船で、凡そ2000年前の人骨が発見されたとするニュースが報じられていました。この人骨、DNA鑑定が予定されており、高度な文明を築き上げた人々の容姿、祖先、並びに、地理的起源などの解明が期待されているそうです。

 今日、DNAの解析技術は長足の進歩を遂げ、人類の分化過程上の系譜のみならず、髪の毛や瞳の色まで判別し得るに至っております。日本人はどこから来たのか、という問題についても、最近、縄文人の遺骨の解析研究なども進み、様々な事実が判明しております(かなり固有性が高い…)。その一方で、日本人の起源のみならず、日本国の成り立ちを正確に知るために、避けては通れない研究対象があります。それは、天皇陵から出土した人骨のDNA解析調査です。

 歴代の天皇陵については、明治時代に推定で指定されたものが多く、実際には、相当の誤りがあり、本来、厳密な再調査を実施し、誤りを正さなければならないのですが、天皇陵に限らず、古墳の多くは、古来、草木一本手を触れてはならない禁足地とされる場合が多く、陵墓の神聖さを保つためにも、発掘調査が控えられる傾向にありました。しかしながら、御霊を一時的に他所に移したり、然るべき儀式を執り行えば、発掘調査が不可能という訳ではありません。天皇陵は、皇室の私的な所有物ではなく、日本の歴史と日本人全員に関わるのですから(皇統の血は国民にも広がっている…)、DNA解析によって日本人の系譜を知ることは、自らの民族の歴史と由来を確認することでもあります。国民から然したる反対の声が上がるとは思えないのですが、どうでしょうか。

 日本国の土質は酸性であり、骨が解けて残らないとする説もありますが、阿武山古墳では、ミイラ状態に近い人骨も発掘されております。そろそろ、日本人自身が、自らが何者であるのかを知るべき時が来ているように思えるのです。

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