時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

差別問題の元凶は人の移動-移民政策に反対する理由

 政府は、働き方改革の一環として、外国人労働者の受け入れ拡充をも検討しているそうです。移民政策に反対を唱えようものなら、差別主義との批判が浴びせられることもあるのですが、この批判、差別問題の原因を忘却していると思うのです。

 そもそも、人種差別であれ、民族差別であれ、仮に、国境を越えての人の移動がなければ起こり得なかったことです。昨日も、アメリカ大統領選のTV討論において、クリントン候補は、トランプ候補を”差別主義者”と呼んでいましたが、アメリカの人種差別問題も、奴隷商人達がアフリカから現地の人々を大量に連れてこなければ、発生するはずがなかった問題なのです。全く以って、奴隷商人は罪深い人々です。また、人種問題のみならず、アメリカには、出身民族や移民の時期によっても暗黙のヒエラルヒーがあるとの指摘もあります。こうした現象は、南米諸国等でも見られ、今や、世界的な広がりを見せています。

 人種や民族といった集団の形成は、地球上における人類の分散的移動と集住・定住を起源としていますが、仮に、それぞれが、その自生的な自然集団のままであったならば、双方とも、異質な存在に苦しむことはなかったはずです。多民族、かつ、移民国家であるアメリカでさえ差別問題が社会の亀裂を生み、社会の不安定要因となっているのですから、ましてや、日本国を含め、およそ民族的枠組みを以って国民を形成している諸国にあっては、より深刻な事態が予測されます。移民の大量受け入れは、国家的アイデンティティーの崩壊さえ引き起こしかねないからです。イギリスのEU離脱の決定にも、まさに、移民の大量流入による国家喪失の危機感がありました。

 移民によって人種や民族間に摩擦を生じさせることは、歴史が証明しているにもかかわらず、移民問題をめぐっては、今日では、移民側の一方的な権利主張も著しいく、政治、経済、社会といったあらゆる面において、居住国尊重や同化どころか(”郷に入っては郷に従え”)、’主流派の追い落とし行動’としても顕在化しています。実際に、日本国のマスコミを見ておりますと、この傾向は、既に杞憂ではなくなっているのです。

 移民こそ人種や民族間の摩擦の元凶であることを踏まえますと、移民政策を採らないことが、差別や社会対立を未然に防ぐ最善の策なはずです。にも拘わらず、差別反対の立場から移民受け入れ政策を支持する人々は、ある意味、自己矛盾しているのではないかと思うのです。

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