時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

豊洲移転・オリンピック予算の膨張問題-都民の”騙された感”

 就任早々、小池百合子知事は、懸案であった豊洲移転問題に積極的に取り組まれておられるようです。この問題で都民や国民を唖然とさせているのは、事業やイベント決定後における急激なる予算の自動的膨張現象です。

 豊洲移転の件もオリンピックの件も、その根は同じです。当初、都民に説明されていた見積での予算は、然程の負担額ではないものの、いざ、蓋を開けてみると、数倍の金額に膨れ上がっている点で共通しているのです。この現象をより一般的な家屋の建設に擬えるますと、東京都の異常さがよく分かります。

 ある人が、家屋の新築について事業者から説明を受けた時には、提示された予算は○○万円でした。○○万円であれば、負担できないこともありませんし、事業者も、リーズナブルな価格での提供を強調しています。そこで、家屋の建設することを決め、契約を結ぶのですが、ここからが、一般のケースと東京都とでは違っています。一般の家屋建築では、契約が締結され、事業者も、その予算内で工事を実施します。ところが、東京都の場合には、事業の実施が決定されるや(この見積も決定も、都民自身ではなく、都民から選ばれた都知事都議会議員、並びに、都庁職員…)、買収資金や資材の値上がり、さらには、人件費の上昇など、様々な理由を付けては、全ての請求書を都民に回すようになったのです。一体、誰が決めて、どのような手続きを経れば、予算の増額が可能となるのでしょうか…(民間の受注建設業者側は、都との契約時からは金額は変わっていないと説明…)。遂に、当初予算の数倍ともなるのですから、都民としては、”騙された感”を禁じざるを得ないのです。最初から3×○○万円ならば、契約するはずもなく、全く以って騙されたと…。

 一般の契約であれば、契約額を大幅にオーバーする場合には、事業者負担となるか、協議の末に合意に至らなければ、解約することも可能です。しかしながら、豊洲移転やオリンピックといった事業やイベントは、公的目的のために実施されているため、そう簡単には止めることもできません。否、容易には後戻りができないからこそ、”これぞチャンス”とばかりに、故意に経費を膨張させた疑いさえあるのです。

 この現象は、それを許すシステムが都行政に内在しているからこそ発生したのであり、制御装置を設けない限り、何度でも繰り返されることでしょう。小池知事には、責任追及に留まらず、事後的な予算膨張が起きないシステム造りに取り組んでいただきたいと思うのです。

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