時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

皇后陛下のお気持ち表明の困惑

 本日は、皇后陛下のお誕生日ということで、毎年恒例のお気持ち表明がありました。目下、関心を集めている譲位問題にも触れておられております。

 ”生前退位”という表現は、おそらくマスコミの造語ですので、この表現に対する違和感は頷けるところです。昨今では、マスコミも”生前譲位”という言葉を用いるようになっておりますが、本ブログでも再三指摘しておりますように、譲位となりますと、国民に不人気な皇太子の即位が前面に打ち出されますので、”生前退位”という表現は、譲位を円滑に進めるために、敢えて用いた苦肉の策であった可能性もあります。

 ”生前退位”の表現問題はさておきまして、実のところ、困惑を覚えるのは、”皇室の重大な決断”が行われる場合について、”皇位継承に連なる方々”であるとしている点です。”皇位継承に連なる方々”とは、配偶者や親族は排除されており、皇太子と秋篠宮のみに限定しております。配偶者や姻族等が介入するのは確かに望ましいことではありませんが、宮家や旧宮家を含めて親族まで外しますと、僅か3人で決定してよいとうことになります。仮に、長子である皇太子が、女帝や女系天皇を主張した場合には、それ程の反対もなく、その意見が通るかもしれません。また、配偶者の意見が実際に排されているのかどうかは、外部からは確認のしようもありません。

 しかも、さらに重大な懸念は、国民の意向が全く考慮されていないところにあります。日本国憲法では、天皇の地位は国民の総意に基づくとされておりますので、憲法の条文に誠実に従えば、”皇室の重大な決断”は、国民が決めるべき事柄です。

 皇后陛下は、天皇陛下のお気持ち表明については、”謹んでこれを承わりました”と述べておられますが、この言葉が、国民に対しても、”皇位継承に連なる方々”の決定を受け入れるように、というメッセージであるならば、今般の有識者会議なども無意味となりますし、国民が、存廃問題を含めて自由に皇室について議論することもできなくなります。

 皇室性善説が崩壊の危機にあり、民心が離れつつある今日、皇室は、国民の声に耳を傾ける姿勢を示した方が、イメージの回復には繋がったのではないかと思うのです。

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