時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

”ユダヤ人”は一枚岩ではない?-政治に影響を与える内部対立

 今日も、古代・中世史研究家の倉西裕子が記事を書かせていただきます。昨日、現在の国際情勢、政界マップを考えるにあたり、『Conspiracy of theSix-Pointed Star: Eye-Opening Revelation and Forbidden Knowledge About Israel,the Jews, Zionism, and the Rothschilds (『ダビデの星の陰謀:イスラエルユダヤ人・シオニズムロスチャイルドをめぐる啓発的暴露と禁断の知識)』が参考となることについて述べました。
 
本日は、混乱や誤解を招かぬよう、2011年の時点で発表されたこの本には、現在の状況に鑑みて、欠けている視点があることについて扱っておきたいと思います。その欠けている視点とは、「白いユダヤ人」と「黒いユダヤ人」との対立問題です。
「白いユダヤ人」とは、「モーゼの十戒The TenCommandments」を尊重する先祖伝来のユダヤ人のことであり、西暦70年にローマ帝国によってイエルサレムが占領された際に、これらの「白いユダヤ人」たちの多くは、ローマ帝国の植民地のあったライン・ドナウ川を中心とした地域に移されました。このことから、ヨーロッパ大陸には、「アシュケナージAshkenazi」と称されている「白いユダヤ人」が多かった、と言うことができます。「白いユダヤ人」たちは一夫一婦制などキリスト教との間に親和性があったため、キリスト教文化、ヨーロッパ文化に馴染み、法曹界・文学・科学・音楽・政治・芸術といった様々な分野において活躍しました。
 
一方、「黒いユダヤ人」は、大まかに言えば、古くは紀元前後のアラブ系のイドメア人をはじめとして、後にユダヤ教に改宗した人々のことです。特に中世以降のヨーロッパでは、その集住地であるゲットーに入り込んできた隠れイスラム教徒、モンゴル由来の人々、盗賊や匪賊などのアウトサイダーたちも、ネオ・ユダヤ人として「黒いユダヤ人」に加わったと推測されます。さらに、アジア・アフリカ・インドにおきましては、「黒いユダヤ人」とは、より限定的に奴隷女性を母として出生した婚外子たちや解放奴隷を意味するそうです。主に、バグダットにおいて『旧約聖書』の曲解を通してつくりだされた『タルムードTalmud』やカバラに依拠する異端の‘ユダヤ教’の信奉者という言い方もできるかもしれません。

かくして、ユダヤ教徒の中には、原始宗教を起源とする異端を信仰したり、形ばかりユダヤ教に改宗していた人々も混じり、「モーゼの十戒」を守らず、非民主主義的な思想の持ち主も多く、このためキリスト教社会から忌避される傾向にあることに加え、非嫡出子問題によって、実際には‘隠れイスラム教徒’である可能性も指摘することができます。イスラム支配下イベリア半島に居住していた「セファルディーthe Sephardic Jews」と称されるユダヤ人には、「黒いユダヤ人」が多いと言うことができます。サスーン家、ロスチャイルド家イエズス会創始者のイグナティス・ロヨラも、すべてセファルディー系であり、「黒いユダヤ人」の国際組織の中心をなしております。なお、ロンドン市長のカーン氏がイスラム教徒であり、小池百合子東京都知事カイロ大学というイスラム圏の大学の出身者であることも、気懸りなところです。
 
このようにまったく正反対の思想と性格を有する2種類の人々が現代ユダヤ人を構成しており、識別が必ずしも容易ではないものの、凡そ「白いユダヤ人」は親キリスト教、「黒いユダヤ人」は親イスラム教といった特徴があり、両者は対立しているようなのです(ヴェーバーの『古代ユダヤ教』に拠れば『旧約聖書』の時代から分裂要因を含んでいる…)。Conspiracy of theSix-Pointed Star』は両者を区別していませんが、現在、両者の対立は深まっているようであり、このことが世界情勢にも影響を与えていると言うことができるのです(本書が執筆された2011年の時点では、両者の対立はさほど大きくはなかったのかもしれません)。

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(続く)