時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

「白いユダヤ人」と「黒いユダヤ人」の違い

 今日も、古代・中世史研究家の倉西裕子が記事を書かせていただきます。「黒いユダヤ人」の問題についてさらに論を進めるために、また、読者の誤解と混乱を招かぬように、本日は、”ユダヤ人”と総称される人々の間に見られる「白いユダヤ人」と「黒いユダヤ人」の区別について扱っておきます。
 
特にインドにおいて「白いユダヤ人」と「黒いユダヤ人」の区別ははっきりしているため、本ブログにおいて、「白いユダヤ人」と「黒いユダヤ人」という用語を用いることとしたのですが、インド以外の地域の’ユダヤ人’の区別にも用いてしまっておりますので、本ブログにおきましては、これらの用語は、ひとまずは、以下のような定義において用いています。
 
白いユダヤ人:「ヘブライ12(13)支部族」の大部分、おそらくは、ハーフ・マナセ族以外の支部族の子孫のことであり、人種的には‘白人’と称されるコーカソイドである。西暦70年のディアスポラ以降、ローマ帝国によっておもにライン・ラント地方などに移され、アシュケナージとも称される場合がある。宗教的には、『旧約聖書』、特に、「モーゼの十戒」を重視し、キリスト教との間に親和性がある。
 
黒いユダヤ人:「白いユダヤ人」とアラブ人、インド人、黒人などの奴隷女性との間に出生した婚外子、ならびに、解放された際に‘ユダヤ教’に改宗したこれらの民族の人々のことであり、人種的には、肌の色がダークであるセム系である。このため、「黒いユダヤ人」と称される(混血の場合には、僅かながらも白い肌の「黒いユダヤ人」もある)。「黒いユダヤ人」は、西暦70年のディアスポラ以降、特に、イスラム圏の中近東、バグダット、インドなどの地域において多く発生しており、セファルディーとも称されている。これらの地域は、モンゴルに支配されていた時代もあったことから、「黒いユダヤ人」には、モンゴル系の人々も含まれる。これらの「黒いユダヤ人」の多くは、イベリア半島イスラム圏にあった時代に、イベリア半島に移住したことから、‘ユダヤ教’からキリスト教に改宗したマラーノ(「豚」の意味)には、「黒いユダヤ人」が多い。イグナティス・ロヨラもその一人である。宗教的には、「モーゼの十戒」を軽視し、バグダットで成立していた「タルムード」やスペインで成立していた「カバラ」を重視し、イスラム教との間に親和性がある。本論では、「黒いユダヤ人」の定義に、マラーノを含める。その理由は、マラーノは「偽装キリスト教徒」であり、内心においては、むしろ反キリスト教者であり、イスラム教系のユダヤ教を信奉しているからである。
 
このように”ユダヤ人”の間のグループを「白いユダヤ人」と「黒いユダヤ人」の定義を整理してみますと、両者の間には、親キリスト教であるのか反キリスト教であるのか、親モーゼの十戒であるのか反モーゼの十戒であるのか、という大きな対立軸があることがわかってまいります。

 よろしければ、クリックをお願い申し上げます。
(続く)