時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

悪者にされたナショナリズム

 とかくに、わが国では、ナショナリズムという言葉を聞いただけで、眉をひそめる人が少なくありません。しかしながら、ナショナリズムには、良い作用もありますので、否定的な側面ばかりを強調してはならないと思うのです。

 ナショナリズムの良い面とは、第1に、この原則の恩恵によって、19世紀以来、多くの諸国が帝国のくびきから逃れて独立を達成することができたことです。もし、民族自決の原則が国際社会で認められていなければ、今日でも隷属状態に置かれた諸国は数多く存在したことでしょう。

 第2に、ナショナリズムがなければ、政府は、国益を守ろうとせず、常に自国民に不利益となるような政策を平気で行うようになります。自国民が他国によって拉致されても、何も対応しないかもしれません。

 そうして第3に、自由で民主的な国家であればこそ、ナショナリズムは、自国を良くする働きを期待することができます。もし、国民が自国を嫌い、自国に対して無関心であれば、より良い国をつくっていこうとする機運や気概は生まれません。自分の国であるからこそ良い国にしたい、という国民の気持ちこそが、やがて選挙制度を通して、現実化へと向かう力となるのです。

 利己主義的なナショナリズムはいただけませんが、相互的で健全なナショナリズムであるならば、ナショナリズムは、我が国を含めて、全ての諸国に成長のチャンスを与えるかもしれないのです。