時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

日朝ピョンヤン宣言は南北分断承認路線?

 冷戦構造の崩壊後も間もない1990年10月に、南北ドイツが再統一を果たした時、誰もが、分断国家は何れ時が来れば、再び一つの国家になるものと信じたものです。しかしながら、我が国の朝鮮半島に関する政策方針を見ましても、その日は、はるか遠くにあるように思えるのです。

 このことは、日朝ピョンヤン宣言からも伺うことができます。仮に、国交正常化を含め、この宣言に盛られた内容を履行するとしますと、我が国は、北朝鮮を、明らかに韓国とは異なる主権国家として扱うことになります。1965年に調印された日韓基本条約の第3条では、韓国を”朝鮮にある唯一の合法的な政府”と記していることから、この条約との整合性も問題とはなるのですが、このことは、我が国が、南北朝鮮分断状態を承認することをも意味することになるのです。

 北朝鮮の国家体制が異常な歪みを持つものであり、かつ、経済支援がこの体制強化に繋がるとしますと、果たして、現時点で、南北分断を前提とした政策を遂行することが適切であるのか、疑問に思えてならないのです。